
厚生労働省が2018年度の人口動態統計を発表しました。
内容は、2018年に産まれた子供の数が91万8,397人で、統計を始めてから過去最低の記録を更新したとのことです。
2016年から3年連続で出生数は100万人を割り、ますます日本の超高齢化社会に拍車をかけるカタチとなりますね。
あわせて結婚した夫婦の離婚率も上昇していて、現在離婚率は35%を超える状態。婚姻件数63万件に対して22万件の離婚件数があり、この数は過去30年の間で3倍以上に膨らんでいるそうです。
物事を考えるときに重要な事は、起こっている事象を不自然と思うのではなく必然的なものとしてとらえ、その流れに逆らうことなく「それならどのような道をたどれば良い方向に行くのだろう?」と視点の場所をズラしてみること。
現在起こっている結果は、長い年月かけて作られた過程があって出来上がったもので、その長い年月に対して短い時間で解決をするようなことはなかなか難しいことですし、たくさんの弊害を巻き起こします。
いま起こっている「結婚しない」「結婚しても離婚してしまう」「子供が産まれない」ということが、現代の日本において自然的に発生した必然ならば、それをあたりまえととらえて生きていく方が抱える負担はラクになりますし、未来も切り開きやすいです。砂漠の真ん中で水田を作ってお米を作ろうとしても苦労が残るだけですものね。
今回は、そんな「結婚しづらい」「結婚してもすぐ離婚してしまう」「カノジョを作りづらい」といった、現代の男性の・・・そして女性の悩みも解決してしまう、中国が生んだヒューマノイドAIのお話です。

中国で必然的にヒューマノイドAIが誕生したハナシ
ヒューマノイドAIのお話に行く前に、まずはその誕生の裏側にある中国の現在の時代背景を解説しますね。
今回の記事のキーワードは「必然」です。
中国でなぜ、男性向けのヒューマノイドAIが誕生し、それが普及したのか?
それはやはり、必然的な流れだったからです。そして、中国の人々はその流れに無理に抗うことなく、自然として受け止めたのでした。
3,400万人の結婚できない男子を抱える中国
隣国である中国は、現在大きな経済バブルまっただ中でありますが、約40年前までは国内での貧困率が50%を超える状態が続いていました。つまり、日本が高度経済成長にあった中、中国ではむしろ経済が破綻しかけ食うや食わずの状態であったということですね。
貧困の理由は、それ以前より政策として進められていた「人口増加政策」により楽観的に増えすぎてしまった人口を支えられるだけの財力が国内に乏しく、食糧難や物資難、そして就職難により多くの貧困家庭が生まれる結果となりました。
これを打開するため、1980年代からは逆に「ひとりっ子政策」と呼ばれる、夫婦ひと組に対して子供はひとりまでしか産んではいけないという長期間をかけての人口削減政策が行われました。
現在となってこの政策は撤廃されましたが、これにより生じた問題が大きく2つあります。
そのひとつは高齢化社会。40歳以下の出生率がそれまでに比べて大きく減少したことで、日本と同じように中国も現在高齢化社会に突入していて、さらには今後超高齢化社会へと進んでいくカタチとなります。
そして、もうひとつは40歳未満の男女の比率が大きく男性側に偏ってしまっていることです。
子供をひとりしか産んではいけないとなれば、どうしても跡継ぎや働き手として男の子が欲しいところ。悲しいお話になりますが、産まれた女の子は健康でありながらも死産扱いされたりするなどをして、男の子の出産が優先されてきました。
それにより男女のバランスは大きく崩れ、40歳未満の男女比はおよそ「3:2」という数字になります。日本では世代によってバランスの偏りは多少ありますが、それでも13:12くらいの範囲におさまっていますので、中国の数字がいかに異常かわかりますよね。
つまりこれは、100人の女性に対して136人の男性がいるということになり、中国国内では今後数十年間にわたって、国内の約3千400万人の男性が一生結婚できない状態となっています。
必然的に発生する男性向け産業
歩み方こそ違えど、辿り着いた場所は同じようなカタチの日本と中国。
日本は、超高齢化社会の土台作りのための人口増加対策として、若い男女が結婚しやすいよう、子供のいる家庭や母子家庭に対しての支援制度を内閣はあれこれと考えています。
しかし、いくら子供を産みやすい環境を国が作ったとしても、その子供たちが将来背負わなくてはいけない国の抱える負債を考えると、一つ屋根の下に暮らす夫妻も、どうしたって子供を産んで父親と母親になることをためらいがちになるというもの。まさに負のスパイラルですね。
それに対して中国は、約3千400万人の逆立ちしたって結婚できない男性たちをターゲットに、新たなビジネスを確立させ、それを国内だけでなく世界的なマーケットへと発展させています。
それこそが、男性を対象とした高級嗜好品「ラブドール」です。
もともとラブドールは日本で開発され、国際的な販売も行っていたのですが、50〜100万円以上する高価な価格設定であることや、ユーザーに課せられたメンテナンスもたいへん面倒で、日本でのビジネスはある程度のヒットこそしましたが爆発的な・・・とまではいきませんでした。
そのビジネスモデルを反面教師として、中国では10〜30万円という比較的安価な価格設定と、メンテナンスの手軽さや、受注から発送までのスピーディーな量産体制などを前面に押し出し爆発的なヒットを記録。マーケットの規模も世界に広がり、ついには株式上場するメーカーまで現れました。

EXDOLL と WM Doll
「約3千400万人の結婚できない男たち」という莫大なシェアがあることから、中国ではラブドールをはじめとした性的嗜好玩具が、巨大なビジネスマーケットとして確立しています。
そのような土台が出来上がっているとテクノロジーというのは発展しやすいもので、現在最新のラブドールは、AI・人工知能を搭載した自律可動型のものとなっています。
AI・人工知能を搭載した自律可動型のラブドールは、7年ほど前から中国とアメリカのそれぞれのメーカーで研究・開発がはじまり、一足先にアメリカでは2017年から発売が開始されていました。
そして、中国においては日本でも正規輸入の販売を行っている「EXDOLL(エクスドール)」というメーカーがAI搭載の自律可動型ラブドールの開発を進めています。
エクスドールの作るラブドールは、日本人の趣味嗜好を意識した作りのものが多く、日本国内にも多くのユーザーが存在しています。
なお、エクスドールの開発担当の中国人の博士は日本の早稲田大学で博士号を取得し、日本のオタク文化にも造詣が深い方です。そのへんが、日本人に好まれるゆえんというところでしょう。
この研究は、中国本土のみならず日本、アメリカ、イギリスなどでも話題となり、イギリスに至っては英国放送協会「BBC」が取材を行ったほどでした。
エクスドールはそれらの取材に対して、AI搭載の自律可動型ラブドールを2019年内に発売するとアナウンスをしていました。
・・・が、それを追い抜くカタチで「金三道具(ジンサン・ダオジー)」という同じく中国のラブドールメーカーが、2017年4月に「WMドール」と命名されたAI搭載の自律可動型ラブドールを販売開始しました。
当時のハイエンドタイプであるWMドールは目論見通り大ヒット。世界規模にラブドールは月間400体が量産販売され、日本にも多く販売されました。
AI搭載ラブドールからヒューマノイドAIへの進化
中国においてのAIラブドールの先行メーカーになるはずであったEXDOLL(エクスドール)でしたが、未だ販売にこぎつけず、研究・開発中であります。
他メーカーから類似品が販売されてしまい、描いていたロードマップに狂いが生じてしまいした。
が、エクスドールはとりわけ焦る様子もなく、2019年発売予定のスケジュールを繰り上げることもしませんでした。
その理由は、金三道具(ジンサン・ダオジー)や、それ以外の他社が先行して販売しているAI搭載の自律可動型ラブドールと、エクスドールが開発中のものではクオリティの差があまりにも開きすぎていたからです。
いうなれば、ジンサン・ダオジーのものは、ラブドールにAmazon Echo(アマゾン・エコー)のようなスマートスピーカーを取り付けて音声での会話ができるようにし、ちょっとしたモーターで多少目や口がパチパチするといったもの。
それに対して、エクスドールが開発中のものはすでにラブドールの粋を超えた、ヒューマノイドAIへと進化を遂げていたのでした。

先行して販売されているWMドールは、頭部だけがロボティクス化されていてカラダについては従来のラブドールと同じく、鉄パイプと針金をTPE樹脂でコーティングしたものでした。
それに対してエクスドールは手足、胴体部の稼働も考え、骨格からヒューマノイドAIを構築していきました。
正直なところ、上の画像はかなり骨格にデコレーションが施されています。黒い部分は本当の骨格ですが、銀色の部分は撮影用に装飾された余計な部品ですね。
記事の最後に、本来の骨格がわかる画像を貼り付けてありますので、よろしかったご覧くださいませ。
また、エクスドール内のヒューマノイドAI開発チームは「DS Doll(ディーエスドール)」として開発の記録をブログやTwitterにて公開中です。
もちろんサイト内等では「2019年発売予定」としておりますが、進捗をみる限り・・・販売に至るまでは、もう少しかかりそうですね。
”女性も助かる”ヒューマノイドAI
記事のタイトルや冒頭でさりげなく、EXDOLL(エクスドール)およびDS Doll(ディーエスドール)の技術が「女性も助かる」「女性の悩みも解決」と書きました。
これだけ見ると連想されることは「男性用だけでなく、女性用のヒューマノイドAIも開発中なんでしょ?」と思われるかもしれません。
もちろん、そういった部分も含まれていますが、もうちょこっとだけ奥が深い内容ですので、よろしかったら読み進めてみてください。
男性にかまう時間がもったいない女性が急上昇中
中国では、前述したような約3千400万人の結婚したくても結婚できない男性方の問題に水を差すような、新たな事象が起こっています。
それは、女性の社会進出です。
都市部と農村部で大きく差はありますが、中国の経済を支える都市部においては1980年代初頭から「女性差別撤廃条約」が発効され、女性の社会進出が本格的なものとなりました。
なお、日本において女性差別撤廃条約が発効されたのは1985年。ただしそれもカタチだけのもので、実際に本格的な動きが見え始めたのは21世紀に入ってからでしょう。
四半世紀ほど女性の社会進出の歴史をもつ中国では、近年その動きはさらに目まぐるしく、さまざまな企業の重役ポジションに女性が就任するようになりました。
もはや結婚をしている夫婦においても男女間の差はなく、男性が家事や育児をするのはあたりまえ。ここは日本と同じように、独身だとしても女性が苦労することなく自立して生活できる社会が出来上がっています。
さてここで、記事を読んでいるあなたに質問です。
自分が仕事にやりがいを感じ、ちょっとやそっとの疲れや苦労があったとしても「もっともっと仕事がしたい!!」というときに、親御さんや友人の方、または恋人から「ちょっとした用事」を頼まれたりしたらどう思いますか?
人それぞれの回答があるとは思いますが、多いのは「仕事のジャマしないでくれる??」ではないでしょうか?
同じような内容が、ここ最近の中国の女性のあいだで問題視されています。
それは、旦那やカレシからの夜の営みの誘いが、自分の仕事のジャマをしていることです。
「仕事を自宅に持ち帰らずとも、翌日の商談をベストコンディションで迎えたいのに、早く寝ようと思ったら自分の布団に旦那が入ってくる・・・」
働きたい女性にとって、定期的に沸き起こる男性の性的欲求への対応はストレス以外のなにものでもないです。このようなことが原因で、中国も日本と同じく結婚世帯の離婚率は増加の傾向にありました。
しかし、その問題はゆっくりとですが徐々に解消されてきています。
その立役者こそが、ラブドールです。

中国国内で販売されているラブドールの約90%は独身男性が購入されていますが、残りの10%は既婚者の男性が購入しています。そして、それを購入者の奥さんは「いいね!」ととらえているのです。
男女がお互いにカラダを求め合い愛し合うのでしたら良いですが、どちらか一方が夫婦という立場上それを我慢して行為を受けるのであれば「道具と性行為をしている」のと変わりないことですよね。
そのように人権を尊重するからこそ、自分勝手な性欲の解消として奥さんに頼るのではなく、ラブドールを購入することに中国の国民はたいへん肯定的です。
それはもちろん背景に、前述したようなひとりっ子政策による男女比率のバランス崩壊や、その先に出来上がった性的嗜好玩具マーケットの巨大化なども反映しているわけですが、世の中の変化の必然的な流れに逆らわず、流されるうえでどのような良い選択肢を選んでいこうか? このように国民全体が行動できることは素晴らしいことです。
また、このような社会システムの変化と、エクスドールが研究・開発するヒューマノイドAIについて、中国の女性権利運動家である小麦莉(シャオ・メイリ)さんは、
「多くの男性は、女性に対して、夜の営み、家事、出産、親孝行を望んでいるが、新世代のラブドールがそれらを代行してくれることにより、女性はそれらから解放されることだろう」
と、たいへん肯定的な意見を述べています。

日本はご存知のように超高齢化社会に突入。この事象が抱える問題は、なにも年金問題等だけではありません。
日本は資本主義であり、民主主義の国です。民主主義というのはその特性上、絶対数の多い層の思想や意見が通りやすいものです。
つまり、日本という国は現在、高齢者がとても住みやすい場所となり、マスメディアは高齢者の意見を通しやすいカタチに構成されています。
環境を流動的に動かす主導者が、若者から高齢者に移動した場合に起こりがちなことは「新しいものを受け入れづらくなる」ということがあげられます。人間は歳を重ねれば重ねるほど変化に対して警戒心をもち、関心をもたなくなります。
日本人は、もしヒューマノイドAIが国内に輸入されるよになった場合、キチンと受け止められるのでしょうか?
AI・人工知能の処理により、ユーザーに対して表情を変え、会話ができて身振り手振りでのコミュニケーションもできる彼女たち。
「結婚しづらい」「結婚してもすぐ離婚してしまう」「カノジョを作りづらい」そんな男性が多い今の日本ですが、それは本人たちのせいではなく時代と社会の仕組みの責任です。
彼らにヒューマノイドAIの女性は、必然的に必要になるのではないでしょうか?
多様性に対していささか柔軟になってきた現代の日本社会。幸せを運んできてくれる電子信号の血液が流れる彼女たちを快く迎えられるよう、世間も成長していくと良いですよね。


