
DX(デジタルトランスフォーメーション)
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
経済産業省
日本の経済産業省が定義した、IT化の次のステップ「DX」
カンタンにDXを説明すると、
「デジタルによる事業構造の変革」です。
2018年頃からビジネス業界に浸透してきたDXですが「我が社はDXを推進している」と謳っている企業のうち、成功しているのは僅か5%ほどで、残り95%は失敗。
失敗の原因はなにかと言うと、結局のところやっていることが「それってIT化でしょ?」で終わってしまっているということです。

IT化とDXの大きな違い
IT化とDXの大きな違いは、
・IT化=業務効率アップのためにデジタル化を進める
・DX=業績向上のためにITを活用する
といったところでしょうか。
多くのビジネスコンサルティングは、商材として「これまでと変わらないIT化ツール」を、DX推進のために是非というカタチで売り込んできます。
が、それらは結局IT化しか成さないわけで、それらのシステムを導入したからと言ってDX推進できるわけではありません。
DXというのは「社員食堂で人気の新メニューを、一般でも販売して儲けてしまおう」といった、それらツールを使用した発想の転換が必要だということをまず覚えておいてください。
DX推進をどこの部署に任せてますか?
日本だけのハナシをすると、IT化という流れが本格的に始まったのは、インターネットが普及し始めた1990年代。
完全に時代がシフトしたのは2000年代に入ってからですね。
このIT化において、多くの企業は「自社IT化」の担当部署を「総務部」に任せていました。
感覚的には、新しいコピー機を購入したり、PCを購入するようなもので「新しいIT機器を導入することで、作業効率化を図ろう」というのがIT化の主だったと思われます。
これは、ほぼほぼ適任かと思ったりもしますが、IT化にしろDX推進にしろ「刷新することで企業の業績を向上させる」ことが目的なので、担当するべきは「企画部」です。
または、別部署として「DX推進部」を設立することが好ましいです。
冒頭で「DX推進に失敗している企業が95%もある」ということを伝えましたが、そのうちの多くの企業がIT化の際の担当部署の流れを引きずって、そのまま総務部に任せてしまい、IT化のときとなんら変わらないアクションしか起こせていないのが現状です。
DX化を成功させるための3ステップ
DXという言葉は、元々「デジタルによる日常生活の変革」を意味していました。
DXという言葉が企業の視点で解釈され、現在では「デジタルによる事業構造の変革」という意味で使われています。
世界においてはもちろん、日本企業においてもデジタル活用が強力に推進されていて、DXの取組みは「成功した企業がアタマ2つ上にいける」といった状況です。
といっても事業構造の変革というのはたいへん難しいことです。
正直、DX推進を行うことは「既存事業を縮小しながら、新事業を起ち上げる」くらいのリスクを伴います。
日本の企業は特に、既存事業の解体や企業遺産について保守的であり、そういった人間の本能的な部分を崩しつつもDXを推進させていくのは、並大抵の努力では完遂しないことです。
そこで、デジタルトランスフォーメーションに至るまでを段階的にグラデーション化させることで、組織全体が反発することなくスムーズにDXへと移行できるモデルを公開します。
ステップ1 デジタルパッチ
まず、第1ステップとして「デジタルパッチ」の段階を踏みます。言葉の意味としては「つぎはぎのデジタル化」大きくデジタル化が前面に出なくとも、手のつくとこと、出来るところをやっていくといったところでしょうか。
感覚的にはIT化とさして変わらない状態ですが、意識的に「IT機器を利用してコストを生み出す」ということを念頭に、改革を行っていくことをオススメします。
また、このステップは「会社全体」ではなく、ミニマムな組織。例えば「部署ごと」「課ごと」で進めていくことが重要です。大きな括りで始めてしまうよりも、各セクションでのプロジェクトリーダーが目の届く範囲くらいの人員での括りが好ましいです。
単純にデジタル化でのペーパーレスによる経費削減や、顧客訪問のリモート化による移動時間の削減など。
さまざまな業務をデジタル化することで、どれだけのコスト削減が出来るかを進めていきます。
成果の明確化を忘れずに
大事なのは相対比の明確化で、デジタル化したことでどれだけの「得」があったのか、これを会社全体で共有することが大事です。
相対比に用いるのはお金だけでなく、時間や、疲労感、ストレスなども入れておくと尚良いでしょう。
疲労感、ストレスなどは感覚的なものになってしまい、数値化するのが難しいですが「以前に比べてラクになった」「ストレスをあまり抱えなくなった」という備考欄的なものでも構いません。明示しておくことが大事ですし、数字が苦手な方たちのココロを掴むのには重要なことです。
ステップ2 デジタルインテグレーション
第2ステップとして「デジタルインテグレーション」の段階へと移行します。
言葉の意味としては「デジタルによる統合化」といったところでしょうか。
前段階「デジタルパッチ」で作られた、部署ごと、課ごとの「コスト削減に成功したデジタル化」を、会社組織全体で共有していきます。
その際に、次の最終ステップであるDX(デジタルトランスフォーメーション)に移行するのに向けて、大事なこと。
「事業構造の変革」がスムーズに起こるための種をここで撒きます。
顧客目線に立ったデジタル統合化
どうしても、それぞれの部署で「このような施策をしてこのような業績が上がった」となると、それをまるパクりしたくなりがちですが、 第2ステップ「デジタルインテグレーション」 では、その統合という視点を「顧客目線」で進めていきます。
会社組織の人間がラクをするためにではなく、顧客がより良い体験をするには、デジタルパッチで生み出されたデジタル化をどのように会社内で統合させていくか?
それにより、新たに部署や課を起ち上げる必要があるのであればどんどん進め、そこへ既存の社員やスタッフを送り込むべきです。
横糸を入れていくイメージで
この段階での、モノの考え方として、既に文章を読んで気付いている方も多いと思われますが・・・
縦糸に対して横糸を編み込んでいく感覚で、企画提案や発言を行っていくことが、プロジェクトの歯車を大きく回していくことに繋がります。
ステップ3 デジタルトランスフォーメーション
遂に最終段階であるDX「デジタルトランスフォーメンション」へと段階は移行してきました。
キチンとステップ1・ステップ2を踏襲しているのであれば、デジタルを前提とした新しいビジネスモデルへの転換と、それにともなう組織構造の抜本的改革は、ほぼ出来上がっているはずです。
大事なのは顧客目線
ステップ2「デジタルインテグレーション」でも述べたように、大事なことは顧客満足度を上げるための「デジタル化」です。
もちろん、すべての企業はお客様を第1と考えサービス向上に努めているでしょうが「IT化・デジタル化」について、顧客に対して目が向いている企業は少なかったりします。
それはなにも、お客様の待合室に最新の自動販売機を置けとか言ってるわけではありません。
お客様がお手数ではあるでしょうが、デジタル化してもらえることで、新たに生まれる顧客満足度や黄金体験。それはもちろん、これまでのものを超えなければいけません。
DX推進 3ステップのルーティーン
ここまで書くと、DX推進のための3ステップ「デジタルパッチ」「デジタルインテグレーション」「デジタルトランスフォーメーション」の3段階を終わらせた企業は、途端に業績向上という感じになってしまいますが、実際のところそこまで急変するわけではありません。
しかし、確実に業績向上は起こります。
また、キチンとステップ1「デジタルパッチ」の段階でのコスト削減の見える化が出来ている企業であれば、社内においての社員満足度や定着率も向上していることでしょう。
DX推進において、大きく事業改革と大きく業績向上を行いたいのであれば、これら「デジタルパッチ」「デジタルインテグレーション」「デジタルトランスフォーメーション」の3ステップを、半年ペースで回していくことをオススメします。
成功を明確にしておく
この3ステップについてのノウハウについての項目の締めくくりとして「ゴールの明確化」をしておくことも付け加えておきます。
ただ、現状「成功企業5%」という、なかなか難しい事業改革となってしまっていて、往々に失敗することが多いでしょう。
しかし、大事なのは上の項目にもあげたように、DX推進のための3ステップを繰り返し回していくことです。
その歯車が止まってしまわないように、例えばですが「社員満足度が上昇した」といった、やや数値では見にくい目標設定も「ゴール」に入れることで、会社全体のDX推進に対してのモチベーション維持にもつながります。
重要なことは、大きな歯車を社員全員で回すことです。
適する人財について
DX推進のやり方については書き終えたので、次はこのプロジェクトに適する人財について。
2019年にビジネススクールIMDが報告したレポートによると、DX推進の責任者や監督者となっているのは最高経営責任者「CEO」がもっとも多いとなっています。
さすがに「デジタルによる事業構造の変革」ともなると、言葉通り企業を抜本的に変えていくわけですから、かなりの発言権を有した管理者でなければ役目は務まらないわけで、自然とそうなるのでしょうが・・・
結局、そこが「成功率5%」の大きな落とし穴です。
理由としては、DX推進を行うにあたって、大きく邪魔をする要素「レガシー(企業遺産)」を一番保守するべき立場にあるのはCEOです。
なので、あくまで立場としてはプロジェクトの責任者としてはアリかと思われますが、監督役は別のポジションの方が良いでしょう。
では、それは誰がなるべきなのか?
DX推進の監督官としての適任ポジションとは?
DX推進3ステップで強く言ったように、重要なのは「顧客視点」です。
よって、監督官として適任なのは、最高マーケティング責任者「CMO」いわゆる企画部長ですとか、営業部長といったところになります。
もしくは、その部署を直接管轄下においている、最高執行責任者「COO」若しくは最高戦略責任者「CSO」が適任です。
CIO・CDOを巻き込みプロジェクトの推進を
CMOを監督役としてプロジェクトを進めるうえで、同時に最高情報責任者「CIO」、最高デジタル責任者「CDO」の存在ももちろん重要です。
また、CIOとCDOについては、CMOからCEOに対してあげた提案や施策を、CEOからの指示でCIOとCDOに下ろすという形式をとっておくことが、改革のスピードアップにつながります。
この3本柱を中心に、各部署や各課それぞれに「ステップ1 デジタルパッチ」を進めさせることで、DX推進の車輪は回り始めます。

DXを推進していくためには、既存の個別領域をデジタルに適用させるというステップ1「デジタルパッチ」そして、顧客目線で組織を変革し、新しい事業モデルへと転換していくステップ2「デジタルインテグレーション」を行う必要があります。
こうしたステップを踏みながら実行するため、実現にはそれなりの時間がかかりますし、ある意味ゴールがわからない部分もあります。
企業に求められるのは、長期的な視線をもち、国内外にアンテナを張りながら、企業の所有する資産を的確に割り当てる意思決定を迅速に行うことではないでしょうか。
これまで発表されている「DX推進」についてのノウハウのなかでも、かなりわかりやすく説明したつもりなので、是非ともみなさまの企業のDX推進にお役立てくださいませ♪