ディープフェイク2020年の現状【楽しむならこの動画!?】「セレブの尊厳を失墜させるディープポルノの現実」

人工知能・AI技術の発展のなかで新しく生まれた言葉「ディープフェイク」

「フェイク」と「ディープラーニング」というフレーズを組み合わせた「ディープフェイク」と呼ばれる偽造動画は、2017年後半にインターネット上で最初に登場しました。

ディープフェイクがどういうものかカンタンに説明すると、

AIの画像処理技術を使い動画に映っている人物を別人にする

というものです。

この技術の発端は映画製作現場からで、撮影した演者を別の人に変えたり、年齢を若くしたり逆に年老いて見せるようなものでした。

例を挙げるのであれば2016年に公開されたSF映画「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」

この映画には、シリーズ第1作の1977年に公開された当時の場面を再現するシーンがあるのですが、それを実現するためにディープフェイクの技術が用いられました。

完成した映像はまさに当時の演者そのままで、この技術は大きく話題となり、以降の作品にも多く使われるようになりました。

AIとCGの技術により、演者は年齢だけでなく容姿さえも自由に変更できる。

映像文化の発展に大きく貢献したこの技術ですが、残念なことに同時に多くの人を不幸にさせる技術にも発展してしまったのです。

ディープポルノによる影響

ディープフェイクの悪用。

はじめに着手したのは「ポルノ業界」でした。業界というのには語弊がありますが、既存のポルノ映像を編集加工し、それをアダルトサイトにアップロードすることで利益を得ている層のユーザーの一部が、この技術を利用し「ディープポルノ(フェイクポルノ)」を作成したのです。

既に存在するポルノ動画で、体型や髪型の似ている女優のものを探し、その顔を有名女優と差し替えるというものが多く出回りました。

いまでこそ、それらには ディープポルノと銘打たれ、視聴者もハナから「ニセモノ」として楽しんでいるようですが、出回った当初は「プライベート映像の流出」というような謳い文句で公開され、顔を差し替えられた有名女優の方たちにとっては、あらぬ噂を立てられたこととなり大きな不幸を呼ぶこととなりました。

政治家のディープフェイク

ディープフェイクのAIアルゴリズムは、動画を作成するためにかなりの量の動画データを必要とします。

なので、もっぱら狙われるのは映像のアーカイブが多量に存在する映画俳優・女優でした。

ですが、しばらくして政治家もディープフェイク動画の犠牲者になり、論争を巻き起こしました。

内容はディープポルノのような卑猥なものではなく、本人が発していない発言や思想を喋らせるというものです。

選挙期間にこのようなディープフェイク映像が流出し、投票結果に大きく影響を与えてしまった事例もあります。

もちろんこういったものについては、警察が介入し嘘か真実かを調査してマスコミが発表するのですが、嘘の映像や発言とはいえ、一度人間に植え付けられてしまったイメージというのはなかなか拭い去ることはできません。

ディープフェイクの部分のみ見てしまっている人にとっては、もうそれは「真実」でしかないのですから。

ディープフェイクを楽しむなら「ユニーク」なものを

スタートアップ企業の「Deeptrace」のレポートによると、2019年の初めには約8千個のディープフェイク動画がオンラインにありましたが、9か月後には約1万4千個にまで上昇しました。

2020年6月の時点での新しい調査によるとオンラインで約5万本のディープフェイク動画がアップロードされており、330%以上の増加を示しています。

一般ユーザーレベルまで技術の介入が可能となったディープフェイクにより作られた動画の多くはユーモラスな内容のものとなっています。いわゆるMAD映像的なポジションでしょうか?

有名なYouTubeクリエイター「CTRL Shift Face」は、アメリカ大統領ドナルドトランプを2015年に放映された犯罪ドラマ「Better Call 」のキャラクターに変身させました。

動画では、現在の大統領がマネーロンダリングの詳細を説明しているところが示されています。

Better Call Trump: Money Laundering 101 [DeepFake]

動画は完全なコメディであり、タイトルにも「Deep Fake」が明示され、深刻な影響はありませんでした。

実際のところ、勝手に自分の顔や容姿を流用され、言ってもいない言動を喋らされる動画というものは、やられた本人にとっては少々不快ではありますが、ある程度のユニークを許容するという行為は有名人やセレブ、政治家にとってはプラスのイメージとなるところもあり、作り手側と見る側、そして扱われた側での3方でWinWinになれるものです。

ですが、ドナルド・トランプ大統領の別のディープフェイクはかなりの怒りを引き起こしました。

Facebookに投稿された動画で、ドナルド・トランプ大統領が「パリ気候協定」においてベルギーを挑発し、嘲笑している内容のものです。

動画は偽物なのですが、本物であるにも関わらず多くの人々が、ドナルド・トランプ大統領に対してマイナスなイメージをもつ結果を生み出してしまいました。

有名女優・セレブを失墜させる

ディープフェイクの最悪の影響のひとつは、有名人の尊厳と評判を完全に損なうことです。

ディープフェイクポルノの起源は、2017年に「Reddit」のようなプラットフォームで表面化し始めました。

また登場しますが、SF映画スターウォーズ・シリーズの最新シリーズのヒロインとなる「デイジー・リドリー」のディープフェイク動画が上げられ、当時の彼女の人気も相まって、大きな論争となりました。

この一件の後、インターネットには他の様々な有名人のディープポルノが誕生しました。

2019年10月に発表されたレポートでは、ディープフェイク全体の96%がポルノであることが明らかになりました。

ディープポルノの被害者としては、映画アベンジャーズ・シリーズ「ブラック・ウィドウ」役のスカーレット・ヨハンソンが有名で、彼女は正式にディープポルノに対しての自分の意思を明言し、このカテゴリーに対して大きく反発しています。

その文章の冒頭は、

ハッキリ言って、これ(ディープポルノ)は、私にそれほど影響を与えていません。

なぜなら、これらの動画は実際のものではないと私が思っているからです。

Scarlett Johansson

と始められ、この書き出しは同じく被害に遭っている多くのセレブや有名女優の胸を打ちました。

しかし、同時に「現状ディープポルノに対してどうすることもできない」ということも発言しており、その原因はディープポルノ自体の技術的な部分だけでなく、投稿された動画に対しての著作権、肖像権に対しての国ごとによる見解の違いなども含まれており、もはやこれらディープポルノに晒された人間は「強い意志で泣き寝入る」しかないというのが現状です。

この問題は現状、これらを扱う一個人の道徳心に委ねるしかないというところでしょうか?

ディープフェイクは、それらを観たわたしたちの認識を変え、有名人の評判を傷つけ、被害者を脅迫し、政治においては投票行動に影響を与えることに加えて、オンライン上に流れるニュースへの信頼すらも排除しています。

なぜなら、社会的責任を負う必要がなく「PV数を稼ぎたいため」だけに存在する情報サイトなどは、閲覧数を上げるためだけにいくらでもウソや誇張をしてきます。検閲されたサイトのみが、みなさんの元に届くのであれば良いのでしょうが、そこまで至っていないのが事実。

ユーザーは「いま観ている情報が本物なのかニセモノなのか?」というステップを踏む必要がある状態となっています。

ディープフェイクテクノロジーは、多くの人が信じているよりも速く向上しているため、そのようなフェイクコンテンツの「現実」はますます説得力を増しています。

多くのディープフェイクビデオは、顔の表情を操作できるだけでなく、生成的なニューラルネットワークを使用して、頭の向きや視線を自由にできたり、表情の変化など無数の動きを実行することもできます。

現在Googleは、ディープフェイク動画を検出する人工知能・AIの開発に取り組んでいます。

この技術の完成と発展により、みなさんのもとにキチンと正しい情報が届く時代がくることを願います。