
2018年にスタンドアローン型のVRヘッドセット「Oculus Go(オキュラス・ゴー)」が発売されました。
これまではPCとの接続が必要で、しかも高価でありながら色々と面倒であったVR機器が、PCがいらず単体での使用が可能というシンプルさに加えて安価でのリリースにより、たいへん多くのVRユーザーを獲得することになりました。
そして続く2019年5月に同じくスタンドアローン型VRヘッドセット「Oculus Quest(オキュラス・クエスト)」の発売。同時にVRアプリや、VR動画のリリースも順調に行われ、2019年もVR市場には追い風が吹いています。
VR業界を牽引しているハードがオキュラス・ゴーやクエストであるなら、ソフトウェアはコミュニケーションアプリである「VRChat(VRチャット)」そして「YouTubeVR」「DMM VR動画プレイヤー」をはじめとした動画再生アプリですね。
今回は、この「動画」というジャンルに的を絞り、2019年のVRトレンドとなっている「180° 3D VR 動画」について紹介していきます!
全方位360°動画はもう古い?
これまでVR動画のウリは全方位型「360°」に視界があるカタチでの視聴でした。
ユーザーがさもその場に居合わせるかのような体験ができる360°動画は、VR機器の未来的性能を魅せつけるためにたいへん有効的なものでしたね。
実際にそれらの動画をVR機器を通して視聴した多くのみなさんが驚きと感動の体験をし、それがきっかけでVR機器の購入に繋がっています。
しかし、普及が進み360°動画の視聴が多く行われるようになってから、アメリカのGoogleが統計をとったところ、あるデータが浮き彫りとなりました。
それは、ほとんどのユーザーが360°動画の「背面側」を見ていないということです。
完全に0%ではありませんが、動画再生時間のうち背面を振り返って見る時間はおよそ5%以下。
また、内容が劇場でのコンサートやファッションショーのような、ほぼ前面で物事が完結するような内容のものに至っては極めて0%に近い数字となっています。
また、ホラー系のものによくありがちな、演出的に背面を向かせようとしている動画についても、ユーザーはあえてカラダをつかって背面を向くのではなく、手元のコントローラーで視点切り替えを行い、背面の映像を前面側に移すことで、自分はカラダを動かして振り返らずとも背面の映像が見られるように対処してしまっています。
結局のところ「振り返る」という動作は、家庭での座った状態でエンターテイメントを楽しむにあたって不要な行為と結果付けられたわけですね。
ただし、これはあくまで動画視聴の場合のデータです。ゲームなどでは、振り返る行為が重要なファクターになるものもあるので、この数字もまた違ってきます。

360°→180°への変遷
映像を作る側にとっても360°動画というのはたいへん苦労を強いられる代物です。
撮影時に従来の2倍以上の配慮が必要で、全方向への気遣いが必要となります。あらぬ方向でなにかしらのミスやトラブルがあったらリテイクせざるを得ないという問題があります。
また、照明の当て方などもたいへん難しく、演者を栄えるようにあてているはずのスポットライトが、背面側では逆光となって、視聴時に見れたものではない映像になってしまったりもします。
もちろんそれらをクリアして出来上がった映像はたいへん素晴らしいものなのですが、それでも完成した映像の背面側をユーザーは全く観ていないわけです。
そしてなにより、データ容量も莫大です。フルHDの通常の動画のサイズが1920×1080なのに対して、4K360°VR動画の画素数は4000×2000と、4倍以上のデータ量が必要となってきます。
それだけのデータ量が動画再生されるわけですから、VR機器での360°動画の視聴は熱暴走しやすいというデメリットもありますね。
これらの問題を解決するため、2017年6月にGoogleはVR動画の新しいフォーマットとして「VR180」のサービス提供を開始しました。
これにより世界中のユーザーはVR180のフォーマットを使って気軽に180° 3D VR形式の動画を他の人に送ったり、YouTubeにアップできるようになりました。
はじめてみましょう☆180° 3D VR動画
2つのレンズによって撮影したものを重ね合わせることによる立体視を活かした、上下左右180°の前面に特化した3D動画は、360°動画に比べて没入感が高いといえます。
理由としては、動画の製作側がキチンと見せるべきものを示し、それをユーザーが自然に視聴認識できるという点ですね。360°動画では散漫になりがちだったその点が大きく克服されています。
また、動画のデータ容量も360°動画に対して半分に抑えられるため、ハイクオリティな高画質化も可能。360°動画では粗かった映像も、180°では通常の2D動画と変わらずクリアな画質で視聴できます。
さすがテクノロジーの最先端を手早く取り入れるアダルト動画の業界では、すでに180°3DVR動画が主流となっているみたいですね。
作り手が優良な作品を作りやすい180°3DVR動画
YouTubeでもVR動画が数多く投稿されるようになり、YouTuberの方々の中でもそろそろVR動画を取り入れたいと思っている方も多いと思われます。
実際、定点カメラによるストーリー性を必要としない動画などは、現在であれば内容に関係なく180°VRの方が圧倒的に視聴回数を稼げていますね。
180°VR動画からユーザーが得られる快感は動画の内容の面白さだけでなく、その場に居合わせるような「臨場感」です。
人間が旅行やドライブにより得られる満足感の中には、見慣れない風景を見ることにより脳が刺激され活性化されるというものがあります。その際に「セロトロニン」と呼ばれる脳内物質が分泌されて、人間は幸福感に似た満足感を得ることが出来るんです。
2Dの、あくまで「絵」としてしか認識されない映像ではなく、3Dの180°VR動画は臨場感満載で、同様の効果を得られることが可能です。
そこまで高価ではないVR撮影機器を購入することで、その効果を得ることが出来るのですから、迷っているYouTuberの方は是非とも挑戦してみてほしいです。
まだまだ山は低く裾野も狭いジャンルですから、コンテンツでのチャンネル登録者独占チャンスもありえますよ!

180°3DVR動画は「臨場感」で価値が決まります
180°3DVR動画を撮影するにあたって気を付けなくてはいけないことは「臨場感」を極限まで活かすことです。
臨場感は没入感に繋がって、没入感は視聴後の満足感を生み出します。
満足感はユーザーに、同クリエーターの他の動画を試聴することを促し、自然と視聴回数やチャンネル登録ユーザーを増やしていきます。
逆に「臨場感の損失=違和感:不快感」ともなりますね。
特に「違和感」は、出来る限り排除していかなければいけません。
違和感はストレスとなり、ストレスが溜まると視聴は途中で打ち切られ、2度と同じ動画は観られることはないでしょう。
2Dの通常の映像の場合は、いかに臨場感を与えるかということで空気感や光量、色味の調整などさまざまな要素を足していくことが重要でしたが、3Dは逆に違和感や不快感につながる要素をいかに削っていき臨場感を保つか? ということが重要となってきます。
180°3DVR動画で「臨場感」を損なう要素
VR動画を撮影するにあたって、以下のような内容は臨場感を著しく損ないます。
すでに180°3DVR動画を撮影している人で、思い当たるふしのある人はいませんか?
それらをズラズラっと紹介しますね。
カメラの水平が合っていない
まず一番最初に基本的なこととして、カメラが地面と水平であることは「必ず」です。
180°3DVRカメラで撮影された映像を視聴する人のほとんどは、椅子か床に座った状態で、視線を真っ直ぐ地面と水平に向けたカタチで視聴を開始します。
それがいきなり、カメラが下を向いているところからスタートしたりすると、突然の違和感に大きなストレスを感じます。臨場感などあったものではありません。
撮影は常にカメラを地面と水平に保ち、もし画面のなかで見てほしいポイントが目線より上や下にあるのであれば、撮影中にカメラをそちらに向けるのではなく、ナレーションで説明をし視線を誘導するですとか、ナビゲーション役の誰かにその方向を指さしてもらうとか、編集時などに「↑(矢印)」のポインターをつけるなりしてそこを見てもらうなどの工夫をしていきましょう。
「水平を保つなんて難しい!」という人は、ランチの牛カルビ弁当よりも安く「水平器」が入手できますので、購入後180°3DVRカメラに貼り付けてしまいましょう!

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風景や人物のスケールや高さが現実と極端に違う
ユーザーに臨場感を与えるためには、動画で映し出される世界が、現実の世界の大きさと変わらないことが必要です。
YouTubeVRの動画などに多く見られがちなのが、カメラがズームで寄りすぎているため、人物や風景があまりにも巨大になってしまっているものですね。まるで自分が小人にでもなったかのうような錯覚に陥いってしまいます。
カメラの上から下まで人物が撮影されたとした場合、その身長は3メートル以上の巨人となります。
商業アダルト動画などのレビューにも、作品によってはスケールの差異が度々あげられマイナスの要因となっています。巨大な女性がいくらセクシーなポーズをとったとしても、それはただのギャグにしかなりませんものね。
撮影する際はカメラごとの特性をよく捉えて、現実の世界とのスケール感が違わないズーム倍率を探し出し、それを固定で撮影するのが好ましいです。
カメラの高さも重要
群衆が前にいる為に、カメラを三脚や自撮り棒にとりつけた状態で、頭上より高く掲げて撮影しているようなものもありますが、動画を視聴したユーザーにとっては宙吊りにされて見せられているようなもの。
このような動画、撮影した本人は状況を飲み込めているので、あとから視聴してもなにも違和感なく見られるのですが、それをわかっていないユーザーにはただの不快感にしかなりません。作り手が陥りやすいポイントですね。
動画を見るユーザーはたいてい座って視聴しています。
床に座っているかイスに座っているかのどちらだとしても、地面から110センチを中心として80〜140センチくらいの高さでの撮影が妥当です。
ちなみに110センチというのは、一般的なイスに座った際の目線の高さです。
それ以上でも以下でも、ユーザーは実際に視聴している場所との高低差から違和感を感じ、臨場感というものは薄れてしまいます。
撮影前に、メジャーなどで自分の足の爪先からどれくらいの場所が110センチ付近になるのか確認をしておき、立って撮影する際はその位置でカメラを構えるなどの工夫をするとよいですよ!

カメラに被写体が接近しすぎて分裂する
2つのレンズによって撮影したものを重ねあわせることによる立体視により作り上げられる3D映像のため、あまりにもカメラに近づくと、2つの映像の焦点が完全にズレて、それぞれ独立した映像となります。
顔面が迫ってきたりすると、そのズレにより左右の目が横一列に4つ並んだ「妖怪4つ目おねーさま」が出現してユーザーが不快になること間違いなし。臨場感など一気に消し飛びますね。
これもカメラの特性を確認し「接近限界距離」を決めるのが良いです。
アダルトビデオ動画で、カメラの前まで女優さんがきてキスをするシーンがよくありますが、上手な動画はこの際、カメラ側にいる男優さんと直接キスはしていません。直接ですと、カメラのレンズに顔が当たるくらいの場所まで近付いているのでどうやったって焦点がブレブレの映像になってしまい、ユーザーに対して不快感を与えてしまうからです。
上手い動画は、カメラ目の前10センチくらいの場所でキスする演技をしているだけです。そこにキス中の音などをあとから被せることにより臨場感を膨らませ、違和感・不快感なくユーザーにさも女優さんとキスをしているかのような錯覚を起こさせるわけです。ホント、よく考えてますよね!
この点をうまく回避しているのが以下の180°3DVR動画。
登場するグラビアモデルの寺本莉緒さんは、カメラに接近こそしてくるのですが、正面にくるのではなく「接近限界距離」ギリギリを責めながら左側の方に回っていきます。
それにより、極端なズレが起こることもなくユーザーは莉緒さんが近付いてくる臨場感を感じ、更には耳元で囁くという凝った演出もありドキドキですね!
更にはスケール感もバッチリで、さすがプロの仕事というところです。
カメラの切り替わり・移動が激しい
3DCGのモデリングを使用したダンス動画に多いのですが、スピーディーな演出を行いたいため、あらゆる角度からのカメラ切り替えや、横方向や上下へのカメラ移動は、ユーザーが得ようとしている臨場感を「一撃粉砕」するものだと思ったほうが良いです。
2Dの動画であればユーザーは見ている映像を「別の空間のもの」として認知しています。ですが、3Dの場合「そこにいる」という感覚からユーザーの映像に対しての認知はスタートします。
その為、カメラが突然移動したりするとユーザーはあたかも「自分が運ばれている」という感覚に陥ってしまうのです。また、それから派生して「VR酔い」が引き起こされ更に不快な思いをすることもあります。
また、2Dと比べて視覚的な情報量が多い3DVRの場合、カメラの急な切り替えにユーザーの脳が追いついていきません。
自分の首の動きに合わせて画面も動くVRの場合、脳は勝手に「自分はそこにいる」と思い込んでしまっているので、急激なカメラの切り替えは、一旦アタマの中の視覚情報をリセットさせて1から作り直すというストレスを与えていきます。
旅行先のホテルなどで起床した際に「自分はどこにいるんだろ?」とアタマがぼんやりすることがありますよね。3DVR動画でカメラを切り替えるということは、それに近いストレスをユーザーに与え続けているということです。
編集でトランジション効果を使ってストレスフリーな映像に
どうしてもカメラの切り替えや場面転換を行いたい場合は、たいていの動画編集ソフトで使用できる「トランジション効果」を使用しましょう。
トランジション効果とは、カットとカット(場面と場面)をつなぎ合わせる際ののりしろのようなもので、前の場面がゆっくりと消えて次の場面がゆっくりと現れてくる・・・といった効果です。
0.8秒〜2秒くらいの長さのトランジション効果を挿入することで、人間の脳が場面転換したことに意識が追いつくスキを与えてあげるのが好ましいですね。
例として、映画「スター・ウォーズ」シリーズの映画監督、ジョージ・ルーカスさんも場面切り替えのトランジションの種類であるフェードやディゾルブを決定するのに、最低でも1ヶ月以上の時間をかけたりします。
2時間弱の映画にそこまで時間をかけるのは、観ている側の人間に、いかにしてストレスを与えず、かつ映像のテンポを崩さないかにこだわっているからです。それほどトランジション効果というものは映像を見せる際に重要なものなのですね。

上から見下ろしたカット・下から見上げたカットなど
繰り返しになりますが、ユーザーはたいてい座った姿勢で動画を視聴しています。
スカートをはいている女性を写すのに、サービスショットなのですかね? 地面スレスレから撮影した動画などありますが、ユーザーにとっては「座ったまま地面に埋められて首だけ出している」感覚に陥ってしまいます。
故意的にそのような演出を施したいのであれば、演者を台の上に立たせるなどした方が臨場感を損なわなくて済みます。
また、頭上から見下ろしたカットなどもナンセンスですね。ユーザーは宙吊りにされているような不安な気持ちにされてしまい、動画に没頭するなど出来るわけがありません。
以上のような臨場感を損なう要素を極力排除することで、ユーザーが没入できる優良な動画を作ることが出来るといえます。
上の動画は、180°3DVRの3DCGモデルを使用したダンス動画のなかで、観ているユーザーの「違和感を排除する」というポイントをすべて押さえていながら、キチンとアガる動画を作り上げている模範の秀作と言っても過言ではありません!
初音ミクちゃんが小柄で細身あるということがわかるスケール感はバッチリですし、カメラの位置も座っている高さとマッチングしています。
カメラの移動や切り替えは一切なく、しっかりとダンスの動きに没頭できます。
上手なのは、画(絵)を保たせるために「場面切り替え」が行われるのですが、画面中のキャラクターの位置やダンスポーズは変わらず背景だけが切り替わり、観ている側に過度なストレスを与えません。
また、その切り替え方も、しっかりと間にトランジション効果を取り入れることで初見の方でも脳へのストレスがないように工夫が凝らされています。
ダンス系の3DVR動画を作りたい方は、是非とも参考にしてみてほしいですね!

今回の記事では180°VR3D動画の魅力と、撮影の際の注意点について紹介してみました。
実際に、180°VR3D動画を撮影して、あとから観直したときにわかることは臨場感のハンパなさです!
自分が撮っているからなのでしょうが、VRヘッドセットをつけて自分の部屋で観ているというのに、撮影場所の香りや、風の感覚まで蘇ってくるんですよね。
特に180°VR3D動画の良い点というのは「空気が撮影できる」ことだとワタシは思っています。
部屋の中で撮影などすると、宙を舞っている小さなホコリさえもカメラはとらえてくれて、それにキチンと遠近感があるので臨場感は爆上がりとなります!
現在、小さなお子様などがいる家庭などには是非とも成長の記録に180°3DVRを利用してみてほしいですね。
何年か後に観直したとき、タイムスリップすることまちがいなしですよ!
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